| 先生の報告は二次障害全般にわたっていますが、私は首の治療に興味があったので、今回は、「首の治療」に絞ります。シンポジウムの内容は専門的な言葉が多いため、読みにくいかと思いますが・・・。
成人にとっての脳性まひの二次障害とは
痙性(*1)と不随意運動(*2)によって引き起こされる運動まひを特徴とするものですが、大人になって関節や骨そして脊椎の変形により、下記のような障害や痛みがもたらされます。
・ 筋肉の緊張やまひ。寝返りや歩くなどの基本な動作の障害や、生活動作の障害。
・ 関節の拘縮(*3)、脱臼の痛み、骨の変形による痛み、神経まひの痛みなど。
(*1)ガクガクと痙攣を起こしたようになったり、全身が硬直して突っ張った状態
(*2)自分の意思とは無関係に起こってしまう運動
(*3)筋肉がこわばり、麻痺などのために筋肉が緊張し固まること
二次障害の症状
○頚髄症・神経根症(*4)
首の筋緊張でおこる脊髄、椎間板の破壊によって、神経や脊髄が圧迫されて身体にまひが
でてくる。褥創ができ、栄養障害などの症状が出る二次障害の代表。
首の筋肉に力がなくなり、頚が前にたれる。
○腰痛症(腰椎分離症)
○股関節脱臼、関節症
○肩の脱臼、ひじの脱臼
○膝関節痛、変形性膝関節症
○足部痛
○側弯症の進行による呼吸障害・嚥下障害(*5)
(*4)頚髄症は正確には頚椎症性脊髄症の略。頚椎椎間板ヘルニアもほぼ同様。
頚椎のどこかが何らかの形で神経が圧迫されている場合は、脊髄症と神経根症の
2つに分けられる。脊髄は脊椎の中の、神経根は頚椎部分で脊髄から枝分かれした神経。
(*5)飲み込みが悪くなる
整形外科治療
○各種除圧固定手術
脊髄症、神経根症で、現在行われている手術方法は下記の通り。それぞれ問題点を抱えていて
どちらも長期的に効果が持続しない。
・ 後方除圧固定術(本誌37号参照)の問題点
固定が100%でない場合、まひが進行し たり、ついかん椎間板の破壊。
・ 前方除圧固定術(本誌55号参照)の問題点
椎間板の破壊。
○投 薬
○ボツリヌス注射(詳しくはさつきの部屋へ)
自分の意志とは関係なく動いてしまう不随意運動のある筋肉に、とても少量のボツリヌスA毒素を
注射して、緊張を和らげる。ただ、下記の問題点もあり、本質的に治すのは難しく、必ずしも夢の
治療ではない。
・ 緊張が充分なだけゆる緩められない
・ 頻繁に使うと筋肉が縮んできて、支える筋力が低下する
整形外科治療の問題点
・ 頚髄症は相変わらず治る病気となっていない
・ 変形性関節症の積極的取り組みはない
・ 地域の障害者リハビリテーションセンターの関心は脳卒中、脊髄損傷には向けられるが、
脳性まひへはあまり向けられない。
整形外科での革命的治療 『筋解離術』
「筋解離術」とは、整形外科手術です。この手術は、首のまわりの不随意性の高い緊張した筋だけを理論的に選び出し、これを切ったり、延長したりして筋の働きを弱め、首と頭の異常な動きや傾きを除き、頚椎の骨や椎間板の軟骨を保護しようとするもの。画期的な機能の改善がはかられ、体の支持力は完全に温存される、マイナス面がほとんどない夢の治療法です。
「頚部筋解離術」と「除圧固定術」の組み合わせによる二次障害克服
除圧固定術を効果あるものにするため、筋解離術で緊張を弱め、首をささえる筋肉の働きを強く
して、頭を安定させる方法。
○「筋解離術」と「前方除圧固定術」併用手術の利点
・ 広範囲かつ充分な除圧が可能
・ 厳格な外固定(ハローベスト)が不用。ソフトカラーで充分、患者さんは苦しまない。
・ 術後の合併症が少ない。
・ 長期間、骨癒合部が安定し、悪化しない。
・ 上下椎間が痛まない。
・ 骨を前からしっかり除圧固定。プレートで骨を固定
*ただし、神経まで治せないことがある。
○頚髄症に対する頚部筋解離術の可能性、
頚部筋解離術と前方除圧固定術の組み合わせによる画期的成果について
頚髄症は頚部筋解離と後方固定術、または前方固定術の組み合わせにより確実によくなる時代になりつつある。ボツリヌス注射では頭、胸鎖乳突筋(*6)などの緊張が完璧に取れないため、緊張が残り、再発して効果が不充分。一方、筋解離術は、100%完璧に頭、胸鎖乳突筋などの緊張を取ることができ効果が充分です。
(*5)頸部にある筋肉の一つで、首を曲げ、回転させる働きを持つ。
脳性まひ治療の今後の課題
画期的な治療があなた方のものになっている。技術的にはほぼすべて解決されている。
患者さんたちが情報を整理、勉強して、役立つ情報を把握、理解し、患者さん自身も参加して、医療資源を育てていく積極性が求められる。
医師だけに頼るのではなく、治療の考え方、治療のシステムに自ら参加する事によって、始めて頼り得るものが得られるのではないか。医師だけに任せていては駄目、医師を育て、資源を育て、障害を持ったみなさんが浮かび上がっていかなくては!
頚部筋解離術ができる医師
○南多摩整形外科病院
松尾隆医師、菅野徹夫医師、渋谷啓医師
○福岡県立粕屋新光園
福岡真二医師
○熊本リハビリテーション病院
池田啓一医師
報告は終了。
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